日本酒がヨーロッパなどに輸出されたり、海外で注目されているのは、皆さん知っているかと思います。
では、逆に海外に造りに行った酒蔵があることはご存知でしょうか?
岐阜県にある、三千櫻(みちさくら)酒造は、やる事が他の蔵とは一風変わった面白い蔵です。
代表銘柄はその名の通り「三千櫻」というお酒です。
一体何が他と変わっているのか、今回は三千櫻についてご紹介します。
造るお酒はすべて純米で
三千櫻酒造が造るお酒は年間約200石ととても小さな酒蔵です。
地酒と表記された”普通酒の三千櫻”と、”お米の名前だけ表記された三千櫻“を作っています。
この”お米の名前の三千櫻”は全て添加アルコールを使わない純米系の日本酒です。
日本酒の分類については以下の記事をご覧ください。
精米歩合が60%であろうが、40%であろうが、すべて純米としか書いていません。
これには蔵の社長さんであり杜氏さんの想いが表れています。
色々な日本酒が世の中に出ている今、お酒の精米歩合や成分値を先に見て飲む人が増えてきています。
自分の好みを探して飲むことはいい事ですが、どうしても数字に囚われて、飲む前に味を決めてしまう人が増えているのも現状です。
三千櫻の杜氏さんは、「数字や表記などの難しい事は抜きにして、丹精込めて造ったお酒を美味しく飲んでほしい」という願いで、純米でも、純米吟醸でも、純米大吟醸でも「純米」と一括りにして表記しているのです。
純米しか作らない酒蔵はありますが、純米としか表記しない酒蔵は三千櫻だけかもしれません。
純米の味わい
純米表記もこだわりの一つですが、味わいも、やはりこだわっています。
三千櫻の味わいを簡潔に表すと、「華やかな香りと、確かな米の旨味、そしてゆっくりとした余韻」です。
食中酒を意識して造られていて、お米の味をしっかり出すお酒です。
風味は甘く華やかな香りがあり、なにより米の旨味が良く出ていて、お米をじっくりよく噛んだ時に感じる穀物の甘みが特徴です。
香りも味も甘いお酒ですが、この米の旨味をよく感じるので、人によっては「酒らしい酒」という表現をする人もいます。
のどを過ぎた後に、ふわっと香る米の甘みがそう感じるのかもしれません。お米と一緒に飲みたい日本酒です。
代表するお米 愛山
三千櫻を紹介する上で欠かせないのが愛山です。
愛山は酒米の一つですが、最も値段の高い酒米として有名なお米でもあります。
三千櫻では、数種類の愛山を使った銘柄を造っています。
その中でも一部ですがご紹介します。
花見に最適 愛山 さくらにごり
桜が咲く時期に発売される、アルコール度数8度の原酒。
とてもガス感の強い発泡性のお酒で、甘く濃いお米の味なので、8度とアルコール度数が低いのにも関わらずしっかりした飲みごたえになってます。
雫酒の愛山 愛山 袋吊るし
絞る前のお米のもろみを、袋に入れ、ポタポタと圧力をかけずに滴る雫を集めたお酒です。
圧力をかけずに絞る事で、口当たりがとても滑らかになります。
上品という言葉がとても似合う反面、透きとおった旨味がダイレクトに伝わります。
蔵の最上級酒 愛山 40
三千櫻酒造の最上級品となる愛山を40%精米して造った銘柄です。
蔵の最高品質の日本酒が愛山という酒米を使っていることは珍しく、とても貴重です。
味わいはなによりも、愛山の味というのが分かるほど、濃く雑味がなくキレイな風味です。
愛山を使った他の銘柄は上品なものが多いですが、この銘柄は上品さに加え、米の味を力強く表現しています。
愛山を使った銘柄の中でも愛山自身の米の旨みを一番感じることのできる一本です。
現在の酒米は、ほとんどが契約栽培や自社栽培などで、収穫量が決まっていてそれほど多くはありません。
それでも杜氏さんと仲のいい蔵には、三千櫻の愛山を紹介してあげたこともあるそうです。
某県内には開発した酒米を、他の蔵には渡さないでほしいと言った蔵まであるくらいです。
使いたいから使わせてほしいと言っても、簡単には使わせてもらえるものではありません。
蔵にとってそこまで重要な酒米。
そんな貴重な愛山を紹介してあげるとは、とても心意気を感じる杜氏さんです。
国際的な酒造り
2016年の話ですが、メキシコで酒を造るための技術指導に向かったそうです。
メキシコで日本酒を作りたいという方がいたので、器具と米を持って杜氏さんはメキシコまで行き、数回日本とメキシコを行き来して実際に日本で作るのと同じやり方で指導しました。
数年後、メキシコ産の三千櫻のような日本酒が出来るかもしれませんね。
杜氏さんは台湾の方と知り合いで、台湾語もペラペラとのこと。北海道ニセコで台湾の方と仕事もされていたようです。日本酒造りもグローバル化していますね。
まだまだ日本酒は世界に広がる可能性を秘めているように感じる出来事です。
さいごに
純米表記、愛山への注力、海外での酒作り。
三千櫻の面白いところは、他の酒蔵ではやらないことをやっているところであり、まだまだ日本酒の形は色々あるぞと教えてくれる蔵でもあります。
三千櫻は小さな蔵で蔵人も杜氏さんを含めて2人しかいませので出来る事もあれば、小さいが故に出来ない事もあります。
ですが、美味しい日本酒を造ろうという想いは、飲んだ時にしっかり伝わってきます。
名が知れたお酒ではないですが、見かけたら是非一度飲んで頂ければと思います。
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