成分の約80%が水で作られている日本酒。
これだけの割り合いを占める水は、その品質や硬度によって味に大きな変化をもたらします。
日本酒にはどういった水が適しているのか、どういう違いが出るのかについて学んでみましょう。
- 酒造用水には「醸造用水」と「瓶詰用水」の2種類ある
- 硬水か軟水かによって風味が変わる
日本酒造りの要「酒造用水」に適した水と分類
日本酒を作る時に使われるお水は使われるお米総重量の約50倍で、この水のことを「酒造用水」と言います。
酒造用水はその用途によって2つに分類されます。
- 醸造用水:お米を浸漬させたり、仕込み用のお水。
- 瓶詰用水:日本酒を入れる瓶を洗浄したり、瓶詰をする際に定められているアルコール濃度の規格に合わせるためにお水を足す割水用水などのこと。
酒造用水、とくに日本酒の成分に大きな影響のある醸造用水の基準は一般的に飲まれている水道水の基準より厳格な基準が定められています。
酒造用水中の酒造りに必要な成分・不必要な成分
厳しい基準が設けられているのには理由があります。
その役割についてもう少し詳しくみてみましょう。
醸造用水に必要な成分
- カリウム、リン酸、マグネシウム・・・麹菌と酵母の増殖を助ける働きがあります。この3つが不足していると発酵が進まず、日本酒の製造が出来なくなってしまう場合もあります。
醸造用水に不必要な成分
- 鉄:鉄は日本酒の色を褐色化し、香りを悪くする作用を持っています。透き通った色や香りを楽しむ日本酒ですので、水道水に比べ低い含有量が基準とされています。
- マンガン:日本酒は紫外線により化学変化し着色されますが、マンガンは着色を促進してしまう作用があります。なるべく色の変化することのないよう鉄同様に低基準値になっています。
- アンモニア、亜硝酸、有機物等:動物・植物の渇死体の窒素酸化物が分解生成したもので、汚染された水である可能性が高いため検出された時点で酒造用水としては適していないと判断されます。
水質検査は毎年行われ基準を満たしているかをチェックし、公的機関によって管理されます。
日本酒の味に影響!酒造用水の硬度について
水は地中深くの鉱物が溶け込み、含まれるミネラルの量によって分類されます。
一般的にミネラルが少ないものを軟水、ミネラルの多いものを硬水、その中間に位置するものを中硬水、と3種類に分類されます。
ただ日本酒で使われる水はさらに細かく分類され、「軟水」「中軟水」「軽軟水」「中硬水」「硬水」「高硬水」の6種類に分かれます。
- 硬水:酸が少し強く、キリッとした辛口の日本酒になります。
代表例)兵庫県、灘の宮水で仕込まれた日本酒 - 軟水:まろやかで綺麗な味わいの日本酒になります
代表的)京都府、伏見の御香水で仕込まれた日本酒
ちなみに柔らかみのある軟水で作られた日本酒を「女酒」、キリッとした強みのある日本酒を「男酒」と呼びます。
日本の地下水は滞留期間が短いので、地中のミネラルが溶け込む量が少なく軟水のものが多い傾向にあります。
この硬度はその国の食生活にも関係しています。
軟水が多い日本はその柔らかさや味の邪魔しないさっぱりとしたミネラル分を利用して、ダシを取ったり日本茶をこしたりする文化ができました。
それに対してヨーロッパは石灰岩が多い地層と高い山々のおかげで地下水の滞留期間が長く硬水がメインです。
硬水はミネラルの多さで肉の臭みを軽減させたり、臭みの元である灰汁をよく出す働きがあります。
なので、煮込み料理やワインなどが発展しました。
日本酒を造る蔵元は良質な水の流れる地域に多い
日本は全体的に山地が多く、年間通して雨が降り水には困らない環境です。
地上に降った雨が地下へしみ込み、ミネラルを吸収しながら自然ろ過されて流れる地下水は日本酒作りに欠かせないものです。
自然の恩恵を受けて作られる日本酒の多くは川の近くに蔵を置いていることがとても多いのです。
理由としては、
- 良質な水を大量に確保できる
- 水のある所には人が集まり、酒造りの出来る人数を確保できる
が挙げられます。(気候も理由の一つですが、今回は水の限ったものだけを挙げます。)
最初にも述べましたが、酒造用水は使うお米総重量の約50倍も使うので、そんな大量の水は遠方から運ぶには時間もかかる上に人が大勢必要です。
また運んでいる途中で水が劣化してしまう恐れがあります。
そしてもう一つの理由として、人手確保です。
水は私達が生活する上でも欠かせないものです。
昔は水道なんてものはありませんから、自然と水のある場所に人は集まりました。
もともと日本酒は寒造りといって冬に作る事が多かった為、農家など冬場に仕事のない人たちを集めて日本酒作りの手助けをしてもらえることがあったそうです。
「水を運びやすい」「人が集まりやすい」といった理由から水源のある場所には多くの蔵元ができ、栄えました。
さいごに
四季のある気候と山の多い土地・適度な水があってこその日本酒は自然が作り出したといっても過言ではありません。
近年、人口増加や科学製品の影響で水質が悪くなったり、環境問題が懸念されています。
一人ひとりの意識で自然環境は変わると思っています。
ほんの少しでも気にかけて、いつまでも美味しい日本酒が飲めるよう努めたいものです。
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