“生まれたままの日本酒”と聞いて、どのような日本酒を思い浮かべるでしょうか?
火入れをしていない、生の日本酒が世に出てきて久しいですが、どんな生酒よりも生々しい栃木県の日本酒「姿」。
生原酒に魅せられた酒蔵が追求した本来の”姿”の日本酒をご紹介します。
本来の生まれたままの形を表現した栃木県の日本酒「姿(すがた)」
栃木県、飯沼銘醸で造られる銘柄「姿」。
現在の社長さんがまだ蔵を継ぐ前にとある場で飲んだ生酒がとても美味しく、こんな日本酒を自分も造りたいと思い立ち“姿”を造ったそうです。
銘柄の由来は、
「日本酒のしぼりたての、水を加えていない、濾過もしていない、生まれたままの姿の状態で飲んでほしい」
こうした想いから“姿”は誕生しました。
昔はこのような想いがあっても、設備や技術の都合で、品質が保てない理由から、生原酒や生酒などは、その酒蔵に行かないと飲めないということが多々ありました。
今でも特別感を出す理由から「この生酒は酒蔵の直売店でしか飲めない」という日本酒も場合によってもあります。
「姿」は生のままのお酒を味って欲しいとの思いから、基本的に無濾過生原酒で、生原酒のためアルコール度数も18度程度と力強い日本酒となっています。
甘く香りが強い「姿」の定番銘柄紹介
「姿」は日本酒の中でも風味がとても甘く香りが強く、酒器やグラスに注いだ時に周りに香りが広がるのが分かるほど芳醇な銘柄です。
米の旨みや甘みも力強く感じますが、繊細な上品さも感じられる飲み心地です。
なによりも特徴的なのが、舌に感じる染み渡るような生々しさです。
数多くの生の日本酒がありますが、そのどれよりも生の触感が伝わる日本酒かと思います。
生原酒ですので、冷やして飲んで香りを感じてながら飲むのがおすすめです。
姿の定番銘柄は全て純米吟醸
定番品は全て純米吟醸で、山田錦、雄町、ブラックインパクトがあります。
それぞれ簡単にご紹介します。
姿 山田錦
クリーム色のラベルの山田錦は、姿の生のままの日本酒を味わうというコンセプトに一番マッチした一本。
山田錦で造られた無濾過生原酒の力強さをしっかりと受け止めることができ、「これぞ姿」と言える銘柄です。
姿 雄町
濃い臙脂のラベルの雄町は、山田錦に比べジューシーで酸味を感じ、雄町好きにはたまらない一本です。
香りと味わいのガツンとした骨太の一本です。
姿 ブラックインパクト
定番ながら、姿の提案の仕方を変えたのが黒いラベルのブラックインパクトです。
お米は山田錦とひとごごちというお米を掛け、名前の通り、黒い衝撃(炭素濾過)をかけた一本です。
姿唯一の弱点というのは、あまりにも香りと味わいが強くて、飲み疲れてしまったり、香りが強いことから食べ物の相性が難しということがありました。
このブラックインパクトは炭素濾過することにより、強い香りの軽減と後味にキレを持たせることで、食事と合わせやすくなり食中酒としても提供しやすくなりました。
香りを軽減しているとはいえ、根本の姿の味わいは全くブレていません。
個性的なネーミングが楽しい!季節限定の「姿」は別の姿
ネーミングが「生まれたままの姿」という云われですが、季節限定品では面白いネーミングで発売されています。
新酒:初すがた
春:晴れすがた
夏:浴衣すがた
秋:艶すがた
日本の行事や文化を感じるような名前で発売される日本酒は中々珍しいです。
また栃木の酒蔵ながら、北海道と縁があるらしく、晴れすがたのお米は彗星、浴衣すがたは吟風を使っていて、北海道のお米を、北海道以外で早い段階から使用している蔵でもあります。
他に限定品として、ラベルが裏になっている裏すがた、ラベルが英語表記の姿スパークリングなどもあります。
季節品や限定品などは、定番の姿のコンセプトからは若干外れているところもありますが、定番があっての限定品ということもあり、遊び心やサービス精神という意味合いが強く出ているところもあります。
また、この飯沼銘醸さんは、懇意にしている酒屋さんなどの要望を多く汲んでくれる酒蔵さんでもあり、「おりがらみの定番品」や「中汲みの限定品」、「定番品の火入れ」や「定番同士の掛け合わせの姿」などなど、1つの商品でも若干異なる商品が多数存在しています。
マニア心をくすぐるところでもありますが、まずは定番品や、基本の限定品から試してみるのがおススメです。
本来の味を知ってから、限定品に目を向けてみてください。
さいごに
その銘柄が誕生した経緯は、その酒蔵の熱意や偶然の閃きだったりします。
この“姿”もそうで、元々社長さんにとって酒造りは家業でしたが、生酒を飲む前はそれほど日本酒に興味がなかったそうです。
造ろうと思った時、東京の大手の酒屋さんの力を借りたり、出来た姿を広めるために、色んな人に頼ったりと、閃きの次に熱意があったりします。
よく見かける銘柄でも、それが出来る経緯は意外なところからあったのかもしれません。
そう思うと日本酒の名前一つでも、どうしてその名前なのか考える楽しみがありますね。
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