奈良県は清酒発祥の地として現在の日本酒作り大きな貢献をしたお寺や寺院が多く建ち並んでいます。
どういったものなのか、歴史やそこで開発された作り方についてまとめてみました。
日本初の清酒「菩提泉」の一回仕込み(菩提もと)
奈良県南部にある寺院の一つ「菩提山正暦寺(ぼだいさんしょうりゃくじ)」で作られたお酒「菩提泉(ぼだいせん)」は一回仕込みという製法で作ったお酒でした。
三段仕込みとは違い数回に分けずに一回でお酒にしてしまいます。(一段掛法)
一回仕込みでは、まず使用するお米の1割を「おたい(飯)」に炊き、浸漬させておいた残りの9割のお米の中心に入れます。
おたいから染み出す養分は乳酸菌を増殖させます。
染み出たものを「乳酸酸性水」や「くされもと」と呼び、これを仕込み水で使用することによって微生物の増殖を抑えることができるというものです。
天然の乳酸菌で雑菌から守るだけでなく、酵母菌も取り込む自然醸造法が清酒の起源とされ、正暦寺には「日本清酒発祥之地」の石碑が建っています。
今では母酒造りに採用されているやり方ですが、お酒として作っている蔵は全国で2~3件だそうです。
高級酒「南都諸白(なんともとはく)」
平安時代、奈良南部にある寺院が開発をした「南都諸白」は三段仕込みで作られたお酒で、朝廷や貴族の人々からとても人気のある日本酒でした。
寺院で僧侶が作ったお酒を「僧坊酒」と呼びますが、南都諸白はその中でも格別に高い評価を受け平安時代~江戸時代まで長い間飲まれ続けました。
諸白とは麹米と掛け米の両方を使ったお酒のことを言い、それに対して玄米と掛け米を使ったものを「片白(かたはく)」と呼びます。
江戸時代になると関西から江戸へお酒を運ぶことが出来るようになり、運ばれたお酒を「下り酒(くだりざけ)」と呼びました。
その中でも高級なものには「下り諸白」と呼ばれ諸白は高級の代名詞的な意味としても使われました。
現在も受け継がれる「三段仕込み」について
先ほどの南都諸白の作り方である三段仕込みは、日本酒作りの基礎とされ今ではほとんどの酒蔵でこの方法が使われています。
三段仕込みについてもう少し詳しく見てみましょう。
三段仕込みとは、お米を発酵させる工程「醪(もろみ)」造りをする際に「掛け米」「麹」「お水」「母酒」を一度に入れずに3回に分けて入れることです。
なぜ3回に分けていれるのかと言うと、母酒を微生物から守る為です。
もともと母酒は酸性で微生物が繁殖することはあまりないのですが、水や米と混ざり合うことで酸性が薄くなってしまい、微生物が繁殖しやすい状態になってしまいます。
なのでまとめて入れずに時間を空けて少しずつ少しずつ混ぜていきます。
現在この醪造りの工程は4日間かけて3回行います。
今では顕微鏡や科学技術によって微生物の存在が分かりますが、こういったもののない平安時代からこの方法が使われていたのにはとても驚きです。
当時の僧侶は舌だけを頼りに作り、三段仕込みを生み出したのでしょう。
奈良県限定、オススメの日本酒
春鹿 超辛口(今西清兵衛商店)
最高のお酒といわれた「南都諸白」の味を目標にしている「春鹿」。
辛口でキレのあるお酒が特徴です。
とくにこの「春鹿 超辛口」は世界でも飲まれているほど有名で人気のある日本酒です。
熱燗にしてしまうと旨味が消えてしまってただ辛いだけの雑味が残ってしまうのでオススメではありません。
冷酒か常温で飲むとキレの良さがより味わえてとてもオススメです。
辛口が苦手という人には春鹿の「夏しか」が爽やかでスッキリとした飲み心地があり、そちらもオススメです。
三諸杉 菩提もと 純米(今西酒造)
創業350年の今西酒造は日本三大酒神神社の一つである大神神社の麓にあり、古くから日本酒と深いつながりがあります。
しっとりとした甘さとスッキリとした酸味のバランスがとても良い「菩提もと」。
純米は室町時代の菩提もと造りで醸したお酒の再現復刻した日本酒です。
少しクセのある濃密さがありますが、これが良さの一つでもあります。より味わえるよう常温で飲むのがオススメです。
味は甘すぎず辛すぎず、±0(普通)です。
鷹長(たかちょう) 菩提もと(油長酒造)
三諸杉と同じく古き手法菩提もとで作られた「鷹長」。
とても甘味のあり、まるでワインのようだと飲んだ人は口にします。
冷酒で飲むと香りも味わえてオススメです。
ちょっと趣向を変えて、江戸時代のように「割水」にして飲んでも美味しく味わえる日本酒になっています。
さいごに
当たり前のように作られ飲まれている日本酒は昔の人の努力や研究の成果が現在の日本酒作りに生き続けているおかげです。
菩提もと造りで出来たお酒は数少ないですが、普通の日本酒とは少し変わったクセのある美味しさを是非味わってみてください。
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